1.インボイス制度についてのおさらい
1:3つのポイントで理解する
インボイス制度を簡単にまとめると、以下のような仕組みを持つ制度といえます。
- インボイス(適格請求書)によって仕入税額控除が受けられるようになる制度
- インボイスを交付できるのは、税務署長の登録を受けたインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)のみ
- インボイス発行事業者でなければ、インボイスは発行できない(免税事業者は発行不可)
2:記載項目と新たに加わる必須項目
インボイスに記載しなければならない項目は、以下の通り定められています。
1~6はインボイス制度以前からの必須記入項目でしたが、7~9の3項目に関しては、今回新たに加えられた項目となります。
-
- 取引相手の事業者名
- 自社名
- 取引年月日
- 取引内容
- 税率ごとに分かれている合計金額
- 軽減税率の対象品目であることの記載(対象がない場合は記載の必要なし)
- 登録番号(インボイス事業者登録した課税事業者のみ発行可)
- 適用される税率
- 税率ごとに分けた消費税額
上記のルールを見ただけだと、
「なんだ、じゃあインボイス発行事業者になって、新しく請求書のひな形を作ればいいじゃないか」と思うかもしれません。ところが、ここで重要なポイントが1点あります。それは、インボイス発行事業者になるためには、課税事業者になって消費税を納めなければならない、という点です。
すでに課税事業者である法人の場合、この点はすでにクリアしています。 しかし、免税事業者として仕事をしている個人事業主などは、インボイス以前の課税事業者になる条件「売上1,000万円」に達していない場合でも、課税事業者になることが求められます。
つまり、売上1,000万円未満の、スモールビジネスを手がける個人事業者は、単純に考えて支払う税金が増えることになるのです。 かといって、損失をおそれてインボイス登録を見送ると、他の登録を済ませた同業者に仕事を奪われる結果につながりかねません。
たとえ一部であっても、適格請求書が発行できない事業者を相手にしていると、取引先は仕入税額控除が少なくなってしまいます。税金の負担が増えてしまうのであれば、 「適格請求書を発行できる事業者と仕事をしよう」 と乗り換えを検討するのは、当然の流れと言えるでしょう。
こういった事情から、主に免税事業者である個人事業主・零細企業を中心に、インボイス登録をどうすべきか悩む人が増えているのです。
2. 課税事業者と免税事業者、それぞれの違いとポイント
事業を営む立場としては、売り手としても買い手としても、インボイスの存在を無視することはできなくなります。
インボイス制度について理解を深めるために、課税事業者・免税事業者の違いについて確認しましょう。
1:課税事業者
インボイス制度の枠組みの中で、
・課税事業者が
・課税仕入れにつき
・仕入税額控除の適用を受ける
ためには、インボイス(適格請求書)が必要です。
よって、課税事業者は、取引先からインボイスを求められた際、インボイスを発行できるようにしておかなければなりません。
具体的には、適格請求書発行事業者の登録申請をすみやかに行い、登録番号の通知を受ける必要があります。
取引先を課税事業者のみに絞れず、免税事業者とも取引を継続するのであれば、経理上の区分がスムーズにできるよう、新しい会計システムを取り入れることも検討すべきでしょう。
もっとも、インボイス制度の導入前から課税事業者だった事業者にとっては、そこまで大きな負担にはならないものと推察されます。
2:免税事業者
インボイス制度がスタートすることで、立場が大きく変わるのは免税事業者です。
なぜなら、課税事業者になってもならなくても、以下のようなダメージを受けることが予想されるからです。
実際のところ、取引先が継続して取引を続けてくれるかどうかは、事業者側の能力や商品・サービスの品質によって変わってくるでしょう。そのため、取引先と十分な信頼関係を築けているなら、しばらくは免税事業者のまま様子を見るという選択肢もあります。
免税事業者・一般の消費者が主な取引先の場合も、急いで登録を進める必要はないかもしれません。
しかし、大手企業とのやり取りが主な場合は、他の事業者に仕事を奪われてしまい、結果として収入が減少することも想定すべきです
3.インボイス制度化での、それぞれのメリットとデメリット
インボイス制度は、一見すると事業者にとってデメリットしかない制度にしか見えませんが、登録のタイミング次第では事業面でのメリットに転化することも不可能ではありません。
以下、課税事業者と免税事業者のケースで、考えられるメリット・デメリットについてご紹介します。
1:課税事業者
インボイス制度以前から課税事業者だった場合も含め、インボイス登録によるメリット・デメリットとしては、以下のようなものが考えられます。
インボイス制度において、適格請求書発行事業者は、紙媒体だけでなく電子インボイスの交付も認められます。 電子インボイスとは、適格請求書・すなわちインボイスを電子データ化したものを指します。
世界標準規格である「Peppol(ペポル)」が日本の電子インボイスの標準仕様として採用されており、異なるシステム間でのやり取りもスムーズに進むことが期待できます。 また、電子データで情報を管理することにより、紙媒体に比べて大幅に保管面でのコストが少なくなります。
その一方で、請求書の記載ルールなどの変化に対応する必要があり、本業で忙しい中、経理業務に割く時間が増えるものと予想されます。 また、これまで頼ってきた取引先が免税事業者である場合、仕入税額控除がきかないため、その分だけ納付税額が増えることもデメリットになるでしょう。
2:免税事業者
インボイス制度下においても、免税事業者がインボイス登録を行わない場合のメリット・デメリットとしては、以下のようなものが考えられます。
免税事業者として事業を継続すること自体を、国が禁じているわけではないので、これまで通り消費税申告は不要です。また、インボイス関連の事務作業に関しても、当面は必要なくなります。
しかし、すでにライバルがインボイス登録を済ませている場合、じわりじわりと取引先が減り、やがては登録を余儀なくされる可能性は高いでしょう。 登録の遅れによって、消費税の負担増と取引先減少のダブルパンチを食らうくらいなら、いっそのことライバルに先んじてインボイス登録を済ませておくのも一手かもしれません。
4.インボイス制度を”てこ”に、事業の安定化を推進しよう!
ここまでお伝えしてきた通り、将来的に事業を継続する上で、インボイス制度を無視することはできません。だからこそ、インボイス制度を“てこ”に、事業の安定化を推進することが、将来の布石になります。
以下、インボイス制度の登録方法・申請方法についてご紹介します。
1:登録申請の流れ
登録申請の流れについて簡単にまとめると、おおむね以下の通りです。
- 申請書を作成する
- 国税庁に申請書を提出
- 取引先に通知を行う
申請書は、国税庁のWebサイトからダウンロードできます。
なお、国税電子申告・納税システムであるe-Taxを使えば、インターネット上での申請(電子申請)も可能です。
書面で提出する場合、申請書に必要事項を記入したら、国税庁に申請書を提出することになります。 送付先は、管轄地域によって違いがありますから注意しましょう。
提出後、自社の登録番号が「登録通知書」によって通知されたら、取引先に番号の通知を行います。 その際、インボイスの交付・受領方法に関しても連絡・確認をするようにしましょう。
5.インボイス制度への対応に活用できる補助金
個人事業主や中小企業が活用できる補助金の中で、おすすめなのは「IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)」です。
ITツールを導入する際に活用でき、インボイス制度に対応した補助金制度となっている点が特徴です。
補助金の対象者となる条件は詳細に定められており、申請するだけで支給されるわけではありません。
しかし、最大350万円の補助額がもらえるのは魅力です。
会計ソフトや受発注ソフトといったソフトウェアだけでなく、PC・タブレット等のハードウェアにかかる購入費用も補助対象となります。
インボイス登録を契機に、新しいことにチャレンジしたい場合など、有効に活用したい補助金です。
6.まとめ
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