1. 改正電子帳簿保存法(電帳法)とは
電子帳簿保存法は、各税法で保存義務がある帳簿・書類につき、電子データで保存するためのルール等を定めています。
電帳法と略されることも多く、法律そのものは1998年から施行されており、その後数回にわたり改正されました。
2016年の改正では「スマートフォンで撮影した領収書であってもデータとして保存できるようになった」ため、企業の側でも電子データによる保存が積極的に進められたものと推察されます。
ただ、2020年10月に電子帳簿保存法が改正(2022年1月に施行)されたことにより、電子データはデータとして保存する「義務」が生じたことから、多くの中小企業・個人事業主が戦々恐々としている状況です。
その一方で、電子データの“存在”と“改ざんされていない”ことを証明する「タイムスタンプ」に関する取り決めが緩和されたり、利用明細が領収書代わりに利用できるようになったりと、事業者側にとって経理作業が楽になるポイントもあります。
よって、改正にあたり適切に対応すれば、経理作業の効率化を実現できる可能性があるのです。
2. 改正電子帳簿保存法に対応するメリット・デメリット
現段階で、改正電子帳簿保存法への対応が不十分であったとしても、2023年のうちに体制を整えておけば、さまざまな恩恵を受けられます。
その一方で、注意しなければならない点もありますから、メリット・デメリットを把握した上で体制構築に臨みましょう。
1:メリット
法人の国税帳簿書類は、最低7年間にわたり保存しなければならず、紙媒体でキャビネット等に保存するのは限界があります。
帳簿書類を電子化できれば、紙による保存の必要がなくなるため、事務所のスペースを有効に活用できますし、書類の処理も簡単になるものと考えられます。
所定のルールを定めて書類を電子データとして保存することで、1枚単位で探したい書類も楽に見つけられます。
クラウド上にデータが保管されていれば、時と場所に関係なく情報にアクセスできるのも魅力です。
印刷に必要なインクを備蓄することも、クリアファイルやバインダーを年度ごとに買い足す必要もなくなります。
コピー用紙に印刷する機会も少なくなりますから、経費削減の面で効果は大きいはずです。
帳簿書類が電子データ化されることで、所定のパスワードを知っている人間以外は情報にアクセスできなくなりますから、第三者にデータを盗まれる心配もなくなり安心です。
環境によっては、パスワード自体を物理的に管理する必要があるかもしれませんが、書類全部を鍵付きのキャビネットで保管するよりは管理も楽でしょう。
2:デメリット
本格的に帳簿書類の電子データ化を進めるにあたって、既存のPCや会計システムでは運用が難しい場合、新しい設備の導入は避けられません。
また、経営者・従業員のITに関する知識が乏しいと、導入のスピードも遅くなりがちですから、その筋のコンサルタントに頼ることも想定しなければなりません。
時間が経過すれば、PC・ハードディスクは壊れる可能性がありますし、サーバー側の問題でデータが失われるリスクもあります。
複数のバックアップ体制を整えておくことが求められますから、その点でもリスク管理が重要になるでしょう。
3.改正電子帳簿保存法の2つのポイント|区分と要件
改正電子帳簿保存法の施行にともなうデメリットを最小限に抑えつつ、多くのメリットを受けることは、すべての中小企業・個人事業主の願いでしょう。
そこで、体制構築を試みる前に“保存区分”と“保存要件”について理解を深めておきましょう。
1:3つの保存区分
電子帳簿保存法において押さえておきたい保存区分は、以下の3種類です。
2020年に行われた法改正の観点から重要なことは、データとして受け取ったものは、すべてデータのまま保存する必要があることです。
この点は「義務」となっているので、義務違反となってしまった場合、青色申告の承認を取り消されるおそれがありますから注意しましょう。
2:4つの保存要件
電子帳簿保存法においては、電子取引データの保存要件が定められています。
具体的には、以下の4つの要件を満たす必要があります。
4つの要件の中で、中小企業・個人事業主にとってハードルが高い要件は「真実性の担保」でしょう。
タイムスタンプなど、真実性の担保に対応した新システムの導入には、相応のコストが発生するからです。
もっとも、この点については国税庁も理解しており、電子取引データの訂正および削除の防止に関する事務処理規定の「ひな型」を用意してくれています。
Wordデータをダウンロード後、自社の運用体制に応じて規定を作成すれば問題ありませんが、専門家の知見も取り入れつつ構成を考えましょう。
4.ポイント整理で確実な実務対策を!
保存区分・保存要件を踏まえて、どう実務を進めていくべきか、具体的に理解することが大切です。
以下、各種書類を電子データで受領した場合・紙で受領した場合の2種類について、保存方法をどうするか検討していきましょう。
1:電子データで受領の場合
取引先から、請求書や領収書などを電子データで受領した場合、紙に印刷して保存することは認められません。
メールであっても、クラウドサービス経由であっても、保存媒体経由であっても、電子データは原則としてデータのまま保存することになります。
その際、書類が添付されたメールだけを保存するのではなく、必要に応じて検索できるようにする・データが改変されていないことを担保するなど、保存要件を満たしている必要があります。
ちなみに、自社が取引先に送信したPDFなども、電子的な保存が求められます。
2:紙で受領した場合
取引先から紙で受領した書類は、
- 紙のままファイリングする
- スキャンして電子的に保存する
上記のいずれかを選べます。
もし、電子的に保存する場合は、こちらも保存要件を満たしていなければなりません。
とはいえ「紙もすべて電子的に保存するとは限らない」と分かっただけでも、気が楽になった人は多いはずです。
5.インボイス制度との違いにも注意!
ここまでお伝えしてきた通り、電子取引によって発生した請求書・領収書に関しては、改正電子帳票保存法の中では「電子データとして保存」する義務があります。
ところが、2023年10月スタート予定の「インボイス制度」について定めた消費税法では、電子データとして受領した書類につき、紙文書として保存することが認められています。
ただし、電子帳簿保護法の要件を満たしている場合は、国税関係書類は電子データとして保存できるので、別々のルールで運用する必要はありません。
よって、電帳法改正とインボイス制度の両方に対応できるよう、体制変更は同時に進めることをおすすめします。
6.まとめ
電子帳簿保存法改正に向けた実務対策を効率的に進めるのは、現状の取引内容を整理する「業務仕分け」が有効です。
社内の電子取引につき、取引書類や授受方法・保存方法などをリストアップするだけでも、その後の業務効率化につながります。
もし、本業で忙しい中、業務仕分けに取り組むのは厳しいとお考えの経営者様・企業担当者様は、オンラインアシスタント“なげっぱ”をご検討ください。
電帳法改正に対応したシステム等の導入につき、IT導入補助金の活用も含め、最適解をご提案いたします。